高校の授業料無償化をめぐる朝鮮学校への対応について、湯崎英彦知事は30日の記者会見で、「当面は判断をにわかに変える特別な事情がない」と話し、県が新年度から始める私立高校の授業料減免措置拡充の対象とする方針を示した。
県は新年度から、私立高校に通う生徒がいる世帯に対し、国から支給される就学支援金に上乗せする助成制度を設ける。年収250万円未満の世帯には授業料の全額、250万~350万円未満の世帯は3分の2を免除する仕組みで、朝鮮学校も対象とする。
ただし、国は第三者機関を設置し、支給対象とするか学校ごとに検討する方針。湯崎知事は「国と調整をしながら、判断を変える必要があるかもしれない」と含みを残した。
スポンサーサイト
高校授業料の実質無償化で当面は朝鮮学校が対象外とされることについて、野呂昭彦三重県知事は26日の定例会見で、「子どもに本来与えられるべき権利について、政治などの状況が影響していくことは好ましいことではない」と述べた。
県選出の中井洽・拉致問題担当相が、北朝鮮による拉致問題を理由に朝鮮学校を対象外とするよう主張。政府は、制度開始時点で朝鮮学校は対象外としつつ、文部科学省に第三者による評価組織を設置し、教育内容を精査した上で最終判断する方針を決めている。
こうしたことを踏まえ、野呂知事は「国の検討状況を見守りたい」とも話した。
兵庫県は16日、朝鮮学校に対し、県独自の授業料軽減補助金を新たに支給する方針を明らかにした。私立高校生への授業料助成を朝鮮学校を含めた外国人学校に拡充し、2010年度予算案に盛り込んだ。政府が朝鮮学校を高校無償化の対象とすべきか議論していることについて、井戸敏三知事は同日の会見で「対象から外すべきではない」と述べた。
県は公立高校授業料無償化に伴い、従来から実施していた私立高校生への授業料補助の対象を10年度から拡充。専修学校や外国人学校なども対象に含めた。県単独の支給額は私立高校生の2分の1とし、世帯収入に合わせて1万5千~6万円を予定している。
井戸知事は「朝鮮学校とほかの外国人学校と差を設ける必然性は、本県としてはない」とし、「拉致問題の解決と引き替えにするような事柄ではない」と述べた。県教育課によると、国が朝鮮学校を支給対象から外しても、県単独の補助金分は支給する予定という。
県内唯一の神戸朝鮮高級学校(神戸市垂水区、272人)の許敬教頭は「県の判断には、生徒も保護者も勇気づけられる。大学の入学資格がある朝鮮学校をもっと分かってほしい」と話している。
高校授業料の無償化対象に朝鮮学校を含めるかどうかをめぐり議論が起きている問題について、松沢成文(神奈川県)知事は8日の会見で、「朝鮮学校で公然と日本を非難するような教育が行われていないのなら、支援をしていいのではないか」との見解を示した。
知事はまず、「日本の国益に反するような教育が公然と行われていたら、日本の国益上、税金で支援するのは好ましくない」と表明。その上で、「朝鮮学校の授業内容を見る中では、おおむね学習指導要領に沿った形で行われている」との認識を示した。
民族教育については、「どこの国でも、自国の歴史、伝統、文化を大事にして教育するのは当然」と言明。「公然と日本を非難するような教育が行われていないのなら、(高校授業料無償化の一環で支給される)就学支援金を支援していいのではないか」と語った。
政府が来年度から導入予定の高校授業料の実質無償化を巡り、社民、国民新両党からは3日、朝鮮学校を対象とするよう求める声が相次いだ。
社民党の重野幹事長は国会内で鈴木寛文部科学副大臣に朝鮮学校を対象にするよう申し入れた後、記者会見し、中井国家公安委員長が対北朝鮮制裁などを理由に難色を示していることを「子どもたちを拉致問題に絡めて論じるのは品格がない」と批判した。
国民新党代表の亀井金融相は党本部で記者団に「差別する必要はない。子ども手当には所得制限をかけないのだから、その趣旨に従ってやればいい」と、朝鮮学校を対象とする立場に賛意を表明した。