朝鮮高級学校に通う子どもたちを高校無償化の対象から排除しないことを求める会長声明
1 本年3月31日、「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」(以下「高校無償化法」といいます)が成立し、本年4月から施行されています。
高校無償化法は、高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与することを目的として制定されました(第1条)。このような制度の趣旨から、外国人学校に通う子どもたちについても、「高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定める」「各種学校」に通う場合には、日本の私立学校に通う子どもたちと同様に、就学支援金が支給されます(第2条1項5号)。
ところが、政府は、朝鮮高級学校がこの各種学校に該当するか否かに関する結論を留保し、最終的には第三者による評価組織を設けて決定することとして、当面朝鮮高級学校に通う子どもたちを無償化の対象から除外しました。
2 しかしながら、朝鮮高級学校は、各都道府県知事から各種学校としての認可を受け、長年にわたって安定した教育を実施しており、実際にも、日本全国のほぼすべての大学が、同校卒業生に対し、「高等学校を卒業した者と同等以上の学力がある」と認めて受験資格を認定しています。朝鮮高級学校が「高等学校の課程に類する課程を置くもの」に該当することは明らかであり、朝鮮高級学校に通う子どもたちが無償化から排除されるべき理由はどこにもありません。
3 そもそも、子どもたちには、日本国憲法第26条1項、同第14条、国際人権規約A規約第13条、子どもの権利条約第28条、同第30条、人種差別撤廃条約第5条などにより、普通教育及びマイノリティ教育を受ける学習権が保障され、その保障に関しては平等原則に違反してはならないとされています。国公立及び私立学校、専修学校、インターナショナルスクールや中華学校等の各種学校に通う子どもたちが無償化の対象となる中、朝鮮高級学校に通う子どもたちが無償化の対象から排除されることは、平等原則に違反するものであることはもちろん、高校無償化法の趣旨とも全く相容れないものです。
現に、国連の人種差別撤廃委員会は、本年3月16日に発表した「対日審査報告書」の中で、「子どもの教育に差別的な影響を与える行為」として懸念を表明しています。
4 なお、今回の「先送り決定」がとられたのは、朝鮮民主主義人民共和国の拉致問題に対する制裁措置の実施等を理由として、政府内で朝鮮高級学校を除外すべきとの主張が出されたためとの新聞報道等があります。しかし、朝鮮半島にルーツを持つ子どもたちの学ぶ権利を、このような政治的理由により左右することは許されません。
5 現在日本には10校の朝鮮高級学校があり、そのうちの1校が愛知県にあります。
当会では、今回の「先送り決定」を受けて、同校で学ぶ子どもたちの授業の様子を参観し、子どもたちと懇談をしました。子どもたちそれぞれが家庭の厳しい経済状態のもとで不安を抱きながらも真剣に学ぶ姿に直接触れ、子どもたちの学ぶ権利が不当に差別されることがあってはならないという思いを強くしました。
偏見と差別は、すべからく無知と無理解から生じるものです。民族や文化の違いを超え、それぞれの違いを認め合った上で、相互理解と友好を深め合うためにこそ、人間にとって学問の自由、学ぶ権利は必要です。それが平和的な関係を築いていく基礎にもなるのです。
同校に通う子どもたちが高校無償化から排除されることは、県内における人権侵害であり、当会として決して容認することはできません。
よって、当会は、内閣総理大臣及び文部科学大臣に対し、朝鮮高級学校を高校無償化制度から排除せず、速やかに高校無償化法第2条1項の指定をするように強く求めます。
2010年(平成22年)6月30日
会 長 齋 藤 勉
高校無償化法は、高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与することを目的として制定されました(第1条)。このような制度の趣旨から、外国人学校に通う子どもたちについても、「高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定める」「各種学校」に通う場合には、日本の私立学校に通う子どもたちと同様に、就学支援金が支給されます(第2条1項5号)。
ところが、政府は、朝鮮高級学校がこの各種学校に該当するか否かに関する結論を留保し、最終的には第三者による評価組織を設けて決定することとして、当面朝鮮高級学校に通う子どもたちを無償化の対象から除外しました。
2 しかしながら、朝鮮高級学校は、各都道府県知事から各種学校としての認可を受け、長年にわたって安定した教育を実施しており、実際にも、日本全国のほぼすべての大学が、同校卒業生に対し、「高等学校を卒業した者と同等以上の学力がある」と認めて受験資格を認定しています。朝鮮高級学校が「高等学校の課程に類する課程を置くもの」に該当することは明らかであり、朝鮮高級学校に通う子どもたちが無償化から排除されるべき理由はどこにもありません。
3 そもそも、子どもたちには、日本国憲法第26条1項、同第14条、国際人権規約A規約第13条、子どもの権利条約第28条、同第30条、人種差別撤廃条約第5条などにより、普通教育及びマイノリティ教育を受ける学習権が保障され、その保障に関しては平等原則に違反してはならないとされています。国公立及び私立学校、専修学校、インターナショナルスクールや中華学校等の各種学校に通う子どもたちが無償化の対象となる中、朝鮮高級学校に通う子どもたちが無償化の対象から排除されることは、平等原則に違反するものであることはもちろん、高校無償化法の趣旨とも全く相容れないものです。
現に、国連の人種差別撤廃委員会は、本年3月16日に発表した「対日審査報告書」の中で、「子どもの教育に差別的な影響を与える行為」として懸念を表明しています。
4 なお、今回の「先送り決定」がとられたのは、朝鮮民主主義人民共和国の拉致問題に対する制裁措置の実施等を理由として、政府内で朝鮮高級学校を除外すべきとの主張が出されたためとの新聞報道等があります。しかし、朝鮮半島にルーツを持つ子どもたちの学ぶ権利を、このような政治的理由により左右することは許されません。
5 現在日本には10校の朝鮮高級学校があり、そのうちの1校が愛知県にあります。
当会では、今回の「先送り決定」を受けて、同校で学ぶ子どもたちの授業の様子を参観し、子どもたちと懇談をしました。子どもたちそれぞれが家庭の厳しい経済状態のもとで不安を抱きながらも真剣に学ぶ姿に直接触れ、子どもたちの学ぶ権利が不当に差別されることがあってはならないという思いを強くしました。
偏見と差別は、すべからく無知と無理解から生じるものです。民族や文化の違いを超え、それぞれの違いを認め合った上で、相互理解と友好を深め合うためにこそ、人間にとって学問の自由、学ぶ権利は必要です。それが平和的な関係を築いていく基礎にもなるのです。
同校に通う子どもたちが高校無償化から排除されることは、県内における人権侵害であり、当会として決して容認することはできません。
よって、当会は、内閣総理大臣及び文部科学大臣に対し、朝鮮高級学校を高校無償化制度から排除せず、速やかに高校無償化法第2条1項の指定をするように強く求めます。
2010年(平成22年)6月30日
会 長 齋 藤 勉
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