朝鮮学校の無償化-教育的な視点で判断を(河北新報3月4日)
鳩山政権が掲げる「国民の命を守る政治」を狭義に解釈すれば、日本に住む外国人には恩恵が及ばないことになる。そこにこだわっていては共生社会の実現は遠のく。この国に暮らす外国籍の人たちへの支援が、国家の役割として欠かせない。
4月から実施される高校無償化の対象に、在日朝鮮人の子女が学ぶ朝鮮学校を含めるか否かで政権内が揺れている。東北の朝鮮学校関係者の間でも不安が広がっているようだ。
きっかけは、中井洽拉致問題担当相が「日本は北朝鮮に制裁をしているのだから十分考えてほしい」と、文部科学省に対象除外を要請したことだった。
一向に進展しない拉致問題。国家的テロを犯し、その解決に協力しない独裁国家に厳しい姿勢で臨むのは当然のことだ。朝鮮学校は、その北朝鮮を支持する在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)と密接な関係にある。だからと言って、既に3世、4世になり日本社会に根付いている在日の若者の教育問題と制裁を絡めて論じていいものか。
高校無償化法案は、日本の高校と同等とみなされる各種学校の生徒にも就学支援金を支給すると定めている。朝鮮学校は、各種学校に該当し、高校に当たる高級学校は全国に10校ある。鳩山由紀夫首相は「国交がなく教育内容が見えない状況でどう扱うか」と言う。拉致問題と関係付けないとしても、今後つくる具体的な判断基準によっては除外される可能性がある。
朝鮮学校側では今回、国会議員による視察受け入れを表明したが、これまで教育内容が広く知らされてきたとは言い難い。郡山市にある福島朝鮮初中級学校を取材し、日常の様子を伝えた連載記事(「朝鮮学校のいま」)が昨年、本紙に掲載された。初級部では国語(朝鮮語)の授業が毎日最低1時限。朝鮮の地理・歴史や在日の歴史も習う。それ以外は日本の小中学校とほぼ同じカリキュラムという。かつては、金日成主席を礼賛する歌を多く教えたというが、それもない。思想教育にウエートを置いた内容から、日本定住を前提にした現実的プログラムに変わってきている。父母も生徒も学校をよりどころに日本社会との接点を懸命に模索している。そう理解していいのではないか。文科省は実際に視察するなどして授業内容を確認する必要がある。
「すべての意志のある高校生等が安心して勉学に打ち込める社会をつくる」というのが、高校無償化の趣旨だ。家庭の経済的負担を軽減し、教育の機会均等を保障しようという願いが込められている。厳しい経済社会に身を置き、家計をやりくりしなければならないのは、朝鮮学校に子どもを通わせる親も同じだ。学校の内外の実情が分かれば、難しい環境の中で学んでいる生徒を支援しない論拠は薄いと言える。対象の基準は文科省が法案成立後に省令で定める。外交ルートの有無による便宜的な線引きには無理があるのではないか。法案の理念と教育的視点に沿いしっかりと判断してほしい。
4月から実施される高校無償化の対象に、在日朝鮮人の子女が学ぶ朝鮮学校を含めるか否かで政権内が揺れている。東北の朝鮮学校関係者の間でも不安が広がっているようだ。
きっかけは、中井洽拉致問題担当相が「日本は北朝鮮に制裁をしているのだから十分考えてほしい」と、文部科学省に対象除外を要請したことだった。
一向に進展しない拉致問題。国家的テロを犯し、その解決に協力しない独裁国家に厳しい姿勢で臨むのは当然のことだ。朝鮮学校は、その北朝鮮を支持する在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)と密接な関係にある。だからと言って、既に3世、4世になり日本社会に根付いている在日の若者の教育問題と制裁を絡めて論じていいものか。
高校無償化法案は、日本の高校と同等とみなされる各種学校の生徒にも就学支援金を支給すると定めている。朝鮮学校は、各種学校に該当し、高校に当たる高級学校は全国に10校ある。鳩山由紀夫首相は「国交がなく教育内容が見えない状況でどう扱うか」と言う。拉致問題と関係付けないとしても、今後つくる具体的な判断基準によっては除外される可能性がある。
朝鮮学校側では今回、国会議員による視察受け入れを表明したが、これまで教育内容が広く知らされてきたとは言い難い。郡山市にある福島朝鮮初中級学校を取材し、日常の様子を伝えた連載記事(「朝鮮学校のいま」)が昨年、本紙に掲載された。初級部では国語(朝鮮語)の授業が毎日最低1時限。朝鮮の地理・歴史や在日の歴史も習う。それ以外は日本の小中学校とほぼ同じカリキュラムという。かつては、金日成主席を礼賛する歌を多く教えたというが、それもない。思想教育にウエートを置いた内容から、日本定住を前提にした現実的プログラムに変わってきている。父母も生徒も学校をよりどころに日本社会との接点を懸命に模索している。そう理解していいのではないか。文科省は実際に視察するなどして授業内容を確認する必要がある。
「すべての意志のある高校生等が安心して勉学に打ち込める社会をつくる」というのが、高校無償化の趣旨だ。家庭の経済的負担を軽減し、教育の機会均等を保障しようという願いが込められている。厳しい経済社会に身を置き、家計をやりくりしなければならないのは、朝鮮学校に子どもを通わせる親も同じだ。学校の内外の実情が分かれば、難しい環境の中で学んでいる生徒を支援しない論拠は薄いと言える。対象の基準は文科省が法案成立後に省令で定める。外交ルートの有無による便宜的な線引きには無理があるのではないか。法案の理念と教育的視点に沿いしっかりと判断してほしい。