朝鮮学校―除外はやはりおかしい(朝日新聞3月8日)
高校無償化法案の審議が国会で始まった。対象に朝鮮学校の生徒を含めるかどうかについて、川端達夫文部科学相は「排除の立場では検討していない」と述べ、北朝鮮との外交上の問題は判断基準にはしないとした。
発端は中井洽・拉致問題担当相が、北朝鮮制裁を理由に除外を提起したことだった。
鳩山由紀夫首相も先月末、「国交のない国だから、教科内容を調べようがない」と語った。
だが朝鮮学校の教育の大半は日本の学校に準じており、内容も公開されている。「調べようがない学校」ではない。先週は、衆院文科委員会の約20人が東京朝鮮高級学校を視察した。
朝鮮学校が北朝鮮とつながりがあることは事実だ。北からの援助金に運営の一部を支えられる。高校の教室には金日成、正日父子の肖像画があり、修学旅行は中国経由で平壌に出かける。独裁体制維持の手段である主体(チュチェ)思想も朝鮮史などの授業で触れられる。
そうであっても、朝鮮学校で学ぶ生徒への支援の問題と、北朝鮮の異様な体制への対応を同一線上でとらえるのは、やはりおかしい。
子どもの学ぶ権利は、基本的に差別なく保障されるべきだ。核開発や拉致問題で制裁を続けていることを理由に朝鮮学校を支援から外すことは、そうした問題とは関係のない子どもたちにも、制裁を加えることになる。それはあまりにも不当なことだ。
日本の朝鮮半島併合から100年。日本で暮らすコリアンが植民地支配以来の歴史を背負わされた存在だということも、忘れてはならない。
第2次大戦後も日本に残った人は、その後の祖国の分断という状況に苦悩した。北を支持する人、南を支持する人、どちらにも距離を置く人。差別に囲まれ本名すら名乗りづらい日本社会の中で、北朝鮮政府に支援された朝鮮学校が、在日朝鮮人社会のひとつのよりどころになってきた。
現在は、朝鮮学校生の半数程度が韓国籍だ。父母の姿勢も北朝鮮の支持者から反発する人まで様々である。それでも、民族の文化や言葉を大事にしたいという気持ちは共通している。
この問題は、あくまで子どもに必要な学びの保障という観点から判断すべきだ。
拉致や核と学校とをことさら結びつけるような発言に、子どもたちは動揺し、傷つく。政治家は想像力を働かせてほしい。
大阪府の橋下徹知事は「北朝鮮という国は暴力団と一緒。暴力団とお付き合いのある学校に助成がいくのがいいのか」と、疑問を呈した。だが、今冬の全国高校ラグビー大会で、大阪代表として4強入りを果たしたのは、大阪朝鮮高級学校だった。地域に深く根を下ろした学校の子どもたちを、差別する理由はない。
発端は中井洽・拉致問題担当相が、北朝鮮制裁を理由に除外を提起したことだった。
鳩山由紀夫首相も先月末、「国交のない国だから、教科内容を調べようがない」と語った。
だが朝鮮学校の教育の大半は日本の学校に準じており、内容も公開されている。「調べようがない学校」ではない。先週は、衆院文科委員会の約20人が東京朝鮮高級学校を視察した。
朝鮮学校が北朝鮮とつながりがあることは事実だ。北からの援助金に運営の一部を支えられる。高校の教室には金日成、正日父子の肖像画があり、修学旅行は中国経由で平壌に出かける。独裁体制維持の手段である主体(チュチェ)思想も朝鮮史などの授業で触れられる。
そうであっても、朝鮮学校で学ぶ生徒への支援の問題と、北朝鮮の異様な体制への対応を同一線上でとらえるのは、やはりおかしい。
子どもの学ぶ権利は、基本的に差別なく保障されるべきだ。核開発や拉致問題で制裁を続けていることを理由に朝鮮学校を支援から外すことは、そうした問題とは関係のない子どもたちにも、制裁を加えることになる。それはあまりにも不当なことだ。
日本の朝鮮半島併合から100年。日本で暮らすコリアンが植民地支配以来の歴史を背負わされた存在だということも、忘れてはならない。
第2次大戦後も日本に残った人は、その後の祖国の分断という状況に苦悩した。北を支持する人、南を支持する人、どちらにも距離を置く人。差別に囲まれ本名すら名乗りづらい日本社会の中で、北朝鮮政府に支援された朝鮮学校が、在日朝鮮人社会のひとつのよりどころになってきた。
現在は、朝鮮学校生の半数程度が韓国籍だ。父母の姿勢も北朝鮮の支持者から反発する人まで様々である。それでも、民族の文化や言葉を大事にしたいという気持ちは共通している。
この問題は、あくまで子どもに必要な学びの保障という観点から判断すべきだ。
拉致や核と学校とをことさら結びつけるような発言に、子どもたちは動揺し、傷つく。政治家は想像力を働かせてほしい。
大阪府の橋下徹知事は「北朝鮮という国は暴力団と一緒。暴力団とお付き合いのある学校に助成がいくのがいいのか」と、疑問を呈した。だが、今冬の全国高校ラグビー大会で、大阪代表として4強入りを果たしたのは、大阪朝鮮高級学校だった。地域に深く根を下ろした学校の子どもたちを、差別する理由はない。